山名法律・税務事務所
  • ホーム
  • LIBRARY YAMANA.TL/O
  • 実務ツール
  • 動画による紹介 Digital書 実務ツール
  • 実務家残酷物語
  • 実務に役立つ電子書籍・アプリの紹介
  • ご購入についてのご案内
  • お問い合わせ
  • FAQ(よくある質問)
  • ブログ&3分講座

カバヤキャラメルの秘密

 小学校の四・五年生のころだったと思う。ぼくらに人気のあったキャラメルに「カバヤキャラメル」というのがあったキャラメルとしては、森永・明治・グリコが有名で、味もよかった。しかし、カバヤには中にカードが入っていて、これに絵と点数がついている。たしかチータ一が一点、ターザンが三点だったように思う。何点か集めると、点数によって景品がもらえた。なかでも、「カバ大王」というのは50点で、これを当てると「カバヤ文庫」という単行本がもらえた。しかし、これはまず当たらなかった。

 

 何よりもぼくらがねらったのは、カバである。これが当たると、もう一箱その場でキャラメルをもらえたような気がする。あるいは10点くらいの点がついていたような気もする。 さて、単にキャラメル一箱を買うわけではない。さんざん選びぬいて、このカバを当てるのである。このキャラメルの箱には、左上だったか右上だったか忘れたが、隅の方に、小さいけれどカバが大きく口を開けている絵がついていた。その背中に「KABAYA」と文字がついていて、一体として商標のようなマークになっていた。この絵と文字の状態から、中のカードがカバであることを見ぬくのである。 そんなことができるはずがないとだれも言う。現に、店のおじさんもおばさんも、「どれでも同じだよ」と言っていた。大人は「どれも印刷やから変わらへん」「中にカードを入れるのにいちいちマ―クなんか見てるはずがない」といっていた。しかし、ぼくを含めて、近所の子供の何人かは頑としてマークとカードの関連性を疑わなかった。

 

 一箱が一O円だったと思う。お菓子屋さんへ行くと、底が浅くて大きな、餅舟のような箱に山盛りにして積んであった。その中から、一つ一つ小さなマークを点検して、カバのカードが入っているはずのキャラメルを探し出すのである。10分、20分探すくらいざらである。全部見ても気にいらなければ、買わずに別の店に行くことだってあった。どんなマーク(ぼくらは「しるし」といっていた)が当たりになるかは、言葉ではいえない。一律ではないし、時々変ったりもする。その情報を手に入れるのがまたたいへんだった。

 

 ぼくらからすると、かなりお兄ちゃん格の「名人」がいた。この人に運よく会えれば、一緒についてきてもらう。そこで、一緒に探してもらうのである。名人が「『K』の字の太いのがいい」とか「『Y』と『A』の字の問がひっついているのがいい」とか指示をしながら、一緒に選り分けてくれる。最終的に二・三箱にしぼられてくる。たまたま買い物に来た大人は、「そんなもんでわかるわけがない」とか「もういいかげんにしなさいよ」とかいいながら、それでも帰らないで見ている。最後の一箱を、名人が選ぶが、ぼくには確信がない。大人は、「五十分の一や」とか、「当たらへんだったらどうするんや」とかいうが、結果は気にしていたに違いない。名人は「絶対にまちがいない」と言い切る。この人がこういったときは、まず外れない。店のおじさん、おばさん、客の大人が注視するなかで、ぼくはドキドキしながら開けることになる。上蓋を聞いて、箱の両端を手で挟むようにすると、長方形の口がやや楕円形に拡がる。キャラメルと箱の内側にスキ聞が空いて、そこに狭まっているカードが見える。色だけでわかる。「カバ!」。正直、ぼくは、ホッとする。名人もたぶんそうだったと思う。

 

 ぼくらのしていたことは、常識に対する挑戦なのである。さんざんに「当たりっこない」常識論と科学的理由を聞かされながらの行為である。ぼくらの言い分と正しさが証明されなくては立場がない。しかし、ぼくは大人たちがどんな反応をしたか記憶にない。多分、子供の勝利を認めたがらなかったのだと思う。確率的にあり得るとのことで、外箱のマークから中のカードを見ぬくという子供の技術を認めることはなかったと思う。

 

 それにしても、カバを当てるのは一度や二度のことではなかった。「間違いない」と感じた場合は、たいてい当たった。はずれることもあったが、数学上の確率よりは格段に高かったのは確かである。 この当たりを見分けるポイントは、カバの絵とローマ字書体の特徴にあるのだが、何故かこれが少しだけ異常なのである。印刷技術のまずさから、多少変形したマークになることはあり得るが、それに当たりが入っているというのが不思議である。当たりカードを入れる箱だけは別の所で印刷して、他の外れの箱に混入させて出荷していたのかとも考えるのだが、同じものを印制すれば済むことで、わざわざ別の印刷をするとは考えにくい。もっとも、この頃の印刷技術は今ほど精巧でなかったようで、形の上で違いのわかるマークは二〇に一つくらいはあったように思う。その中でも、当たりには一種の型があった。これを見ぬくのがぼくらの技量であり、その技量の高さが自慢のタネでもあった。名人格のお兄ちゃんに教えてもらう。友達の経験を聞いて情報を交換する。そして自分が当てた外箱は残しておく。そうして自分の技術をみがいたものだった。しかし、最後はカンで決めた。もっとも、ギリギリの二者択一に悩むほどなら、どちらもアタリだった。

 

 ぼくらは、何となくカバヤの会社と知恵くらべをしているような気持でいたが、もし会社が、意図的にマークと当たり力ードを関連させていたのだとしたら、そして、それを公にせず秘かに楽しんでいたとしたら、キャラメルの箱をかき回して、一心にマークを見比べているぼくらの姿をどんな風に想像していただろう。きっとマークに秘めた遊び心のメッセージ受信者に微笑んでいたに違いない。もしそうなら、単なる運ではなく技術で当たりを当てる楽しみをぼくらにくれたことをありがとう。それが秘密であったが故に、大人は参入せず、子供だけが理解しあえる宝さがしの遊びを与えてくれたことに感謝する。森永や明治がいかに甘くておいしくとも、カバの当て方について激論し、研究し、懸命に選りあさったカバヤキャラメルには強烈な思い出が残った。カバの形そのままの自動車が街の中を走っていて、そのうしろからついて走ったころの思い出である。  

  平成4年(1992年)2月  奔馬第15号

  • 自己紹介 履歴
  • 弁護士・税理士としての仕事心得
  • 著 書
  • 論文(法律・税務)
  • 講演(講師)
  • 改正相続法 あります税務問題 
  • こんなこと 書いていました
    • 弁護士武装論 
    • 病気かも知れない人たち
    • 病気と言われそうな三篇
    • ヒトダマ(人魂)の思い出
    • カバヤキャラメルの秘密
    • カバヤキャラメルの仲間たち
    • 母の昔話
    • 生涯読み続ける三冊 プラス
    • 果たさざりし辞典
    • 小 説  最新作成
    • 奔馬 小説1
    • あの日 あの一言
    • おばけの夜噺 第一夜
    • おばけの夜噺 第二夜
    • 封印の解けるときⅠ 第一部
    • 封印の解けるときⅠ 第二部
    • 恋愛国家管理論
    • 奔馬 小説2
    • 碧の環 ほんの一部

 弁護士・税理士

 山 名 隆 男

〒604-0917 

京都市中京区富小路通丸太町下る 富友ビル1階

 TEL 075-222-0475

 FAX 075-255-7246

 山名法律・税務事務所 

 YAMANA TAX&LAW OFFICE

 

YAMANA  DIGITAL SHOP

https://yamana-tlo.shop/

ブログ & 3分講座

創作 小説1 小説2

 

 こんなこと書いていました 

 
概要 | 返金/返品条件 | 配送/支払い条件 | プライバシーポリシー | サイトマップ
© 山名隆男/山名法律・税務事務所
ログイン ログアウト | 編集
  • ホーム
    • 自己紹介 履歴
    • 弁護士・税理士としての仕事心得
    • 著 書
      • 遺産分割の法律と税務
      • 相続相談 法律・税務の実践対応
      • 新版 実務家のための税務相談
      • 新版 弁護士業務にまつわる税法の落とし穴
      • 相続税・贈与税
    • 論文(法律・税務)
      • 論文フォルダ
    • 講演(講師)
      • 1 弁護士会・税理士会・支部研修等
      • 2 実務研修講演
      • 3 一般(市民・事業者向け)実務講演
    • 改正相続法 あります税務問題 
    • こんなこと 書いていました
      • 弁護士武装論 
      • 病気かも知れない人たち
      • 病気と言われそうな三篇
      • ヒトダマ(人魂)の思い出
      • カバヤキャラメルの秘密
      • カバヤキャラメルの仲間たち
      • 母の昔話
      • 生涯読み続ける三冊 プラス
      • 果たさざりし辞典
      • 小 説  最新作成
      • 奔馬 小説1
      • あの日 あの一言
      • おばけの夜噺 第一夜
      • おばけの夜噺 第二夜
      • 封印の解けるときⅠ 第一部
      • 封印の解けるときⅠ 第二部
      • 恋愛国家管理論
      • 奔馬 小説2
      • 碧の環 ほんの一部
  • LIBRARY YAMANA.TL/O
    • 実務 NOTE
    • 改正相続法 ここが危ない 配偶者居住権
      • 1 配偶者居住権の消滅と課税関係
      • 2 消滅の意思表示
      • 3 配偶者居住権消滅の合意と金銭授受授受
      • 4 遺留分侵害額請求免除と配偶者居住権放棄
      • 5 贈与税と譲渡所得税のダブル課税
      • 6 建物滅失による配偶者居住権消滅に係る課税
    • 改正相続法 ここが危ない 特別寄与料
      • 1 特別寄与料の免除と申告
      • 2 馴れ合いによる特別寄与料の合意
    • 速報 改正通達
      • 所基通60-5 概算取得費
    • 国税庁質疑応答 これでわかりますか
    • 1 民事事件
      • 1 和解関連
      • 2 弁護士報酬の経費算入
      • 和解を担う弁護士の不安
      • 弁護士報酬の経費算入問題
    • 2 相続事件
      • 1 相続開始後の法律と相続税の問題
      • 2 相続の放棄・承認に係る法律と相続税の問題
      • 3 相続債務に係る法律と相続税の問題
      • 4 遺産分割に係る法律と相続税の問題
      • 5  遺産現金(相続財産)に係る法律と相続税の問題
      • 6 遺産預貯金に係る法律と相続税の問題
      • 7 遺言書に係る法律と相続税の問題
      • 8 遺留分に係る法律と相続税の問題
  • 実務ツール
  • 動画による紹介 Digital書 実務ツール
  • 実務家残酷物語
    • 其之一 和解か判決か
    • 其の二 クライアントの逆襲
    • 其之三 そんなに賠償金を支払うのですか?
      • 新規ページ
  • 実務に役立つ電子書籍・アプリの紹介
    • アプリでつくる実務書
    • ダウンロード前にお読みください
    • リーフレット パンフレット
    • 体験版 ダウンロード
    • CHART 税務判定 紹介
    • CHART 税務判定で租税法問題を解いてみる
    • 信託実務と税法 紹介
    • 相続 税法IN民法 紹介
    • YAMANA Dig Con 3Lectures の紹介
    • 和解と税法exe の紹介
      • 紹介のページ
      • デジタルコンテンツができること
      • デジタルコンテンツのメリット
    • 和解の法理と税務1.7の紹介
      • 和解の法理と税務 画像紹介
    • 相続相談 法律・税務の実践対応 試供版
    • チャート 和解の課税診断
    • 特定商取法に基づく表示
  • ご購入についてのご案内
    • CHART 税務判定exe 販売コーナー
    • デジタル書 インストール案内
    • CHART 税務判定 ダウンロード
    • 「信託実務と税法」exe 販売コーナー
    • 信託実務と税法 ダウンロード
    • 相続 税法IN民法exe 販売コーナー
    • 相続 税法IN民法 ダウンロード
    • YAMANA Dig Con 3Lectures  販売コーナー  
    • YAMANA Dig Con 3Lectures ダウンロード
    • 3Lectures USB版
    • 動作環境
    • 発注者カード
      • 使用許諾書の確認
  • お問い合わせ
    • プライバシーポリシー
  • FAQ(よくある質問)
  • ブログ&3分講座
    • ブログ(Blog by yamana)
    • 1 弁護士業務と税法
    • 2 危険がいっぱい 改正相続法
    • 3 弁護士報酬の経費算入問題
    • 4 相続の法律と税務
    • 改正相続法 危険標識と案内
    • DV防止法保護命令闘争記
  • トップへ戻る
閉じる